第五章 尊崇と礼拝
5、ハッジ(巡礼)

  巡礼即ちハッジはイバーダートの第四番目の基本的義務である。これは経済的に時間的に実行力を有する人に課せられた一生に一回又はそれ以上行うぺき義務である。今日のメッカは予言者アブラハム(彼の上に平安あるように)に神を礼拝するため建立せしめられた方形の建物(カーバ)を中心とする聖処で、神はそれを『神の家』と呼び又地上に於けるあらゆる礼拝はいつもこれに向って為される。毎年イスラーム暦十二月八日その地を出発して九日は東方のアラファートの丘に至り、十二月十二日または十三日にまたメッカに帰るまでの間に、イスラーム圏諸国から参集した巡礼者によって勤行せられる諸行事こそは、所謂ハッジ(巡礼)である。ハッジは単なる儀礼的訪問ではない。この巡礼には我々の信仰の力と善行を強化するための一定の行事と条件がそなわっている。ハッジに参加の場合は常に信仰に対する情熱を燃やし殺生を慎み言動に意を配ることを要する。神は我々の誠意と忠順を嘉みし給うであろう。巡礼はイバーダートの最大のものである。何故なら真に神を敬愛せずしてこんな長い旅に近親や最愛の者を残して出られる筈がない。
 而も此の旅は他のノンキな旅行とは異る。彼の全思考は神に集中され彼の生命は強烈な神への献身の精神に打ち震う、やがてミナーの谷の聖地に到達すると彼は信仰と尊崇の充満せるあたりの雰囲気につつまれ、更にイスラームの光栄にゆかり深いアラファートの丘ムズダリファの野の両聖地を歴訪して強くやきつけられた消すことの出来ない清らかな印象は一生涯永く彼の心に残るであろう。更にイバーダートの他の意味に於て巡礼を果した人たちが享受し得る利益は数多くある。メッカはイスラーム教徒が一年に一回集結するセンターであり会合し意志を交換し共同利害関係を討議して地域や文化の差に係わりなく全信徒の平等な相互信愛の信念を強化実践するところでもある。このように巡礼は世界のムスリムを国際友愛のアッラーの旗の下に団結せしむる。
                          

 

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