第4章信仰箇条
4、神の予言者を信ずること

 前章で我々は神の御使い達があらゆる民族の間に生れ、彼等は全て本来、予言者ムハンマド(彼の上に栄えあれ)が唱えたあの宗教−−−イスラーム−−−と全く同じ教えをもたらしたことを論じた。この点に関しては、神のあらゆる御使いたちは同じカテゴリーに属し、お互に立場を同じくする。もし御使達の中の一人に背くならば、いわば、全てに背くことになる。もし御使達の一人を認め信ずるならば、先駆的に全てを認めなければならない。十人の人間が一つの同じ陳述をしたと仮定しよう。もしあなたがた十人の中一人を正しいと認めるならば、あなたがたは残りの九人をも正しいと認めたことになる。何故ならばあなたがたは彼等の一人を信じないならば、あなたがたは暗に彼等すぺてを信じていないからである。イスラムに於いて、神のあらゆる予言者達を絶対的に信ずる必要があるのはこの理由の為である。予言者たちの中で誰か一人を信じない者があるとすれば、たとえ彼が他のあらゆる予言者を信仰していても、彼はカーフィルである。
 さまざまの時代にさまざまの民族の間に出現したあらゆる予言者の総数は、伝説的に十二万四千名となっている。地球に人類が住むようになってから以降、いかに多くのさまぎまの民族と国民が地上に生れ消えて行ったかを考えるならば、この予言者の数をあなたがたは決して多いとは思えないであろう。我々はクルアーンに述べられている予言者たちの数を積極的に信じなければならない。その他の予言者たちについては、我々は人類を導くために神から使わされたあらゆる予言者たちは真実であると信ずるように教えられている。我々はインド、中国、ぺルシャ、エジプト、アフリカ、ヨーロッパ。その他世界のあらゆる国々に出現したあらゆる予言者たちを信ずる。しかし我々はある人間に関しては、正確に知らされていないから、彼が本当に予言者であったかどうか明確に言えない立場にある。また我々には他の宗教の聖人に反するようなことを言うことは許されない。これらの聖人の中で何人かは神の予言者であったかも知れないが、ちようとモーゼとイエス(二人の上に平安あれ)の後継者たちが、その宗教を作り変えたように、彼等の後継者たちが彼等の寂滅後に、その教えを作り変えたことは全くあり得ることである。それ故、我々がその聖人たちのことを語る場合はいつでも、その宗教の教義と儀式に関してである。これらの宗教の創始者について語ることは、予言者に対して不敬の罪を犯すといけないから、我々はそれを避ける。
 神の予言者であるという事実とイスラームという同一の正しい道を教える為に神から遣わされたという事実に関しては、ムハンマド(彼の上に平安あれ)と他の予言者たち(神の恵みが彼等のすぺてにありますように)の間に相違はない。我々は彼等を全て同じように信ずることを命ぜられているのである。しかしこの点に関して彼等が平等であるにもかかわらず、彼等の間には次のような三つの区別があるのである。

 1、 過去の予言者たちはある特定の時代に、特定の民族のために出現したが、ムハンマド(彼の上に神の祝福がありますように)は未来永遠にわたって全世界のために遣わされたのである。
  註−−この点は第三章で詳しく述べた。

 2、 これらの予言者たちの教えの真の意味は全くこの世から失なわれたか、残存していても純粋な形ではなく、多くの虚偽と誤解の記述が混じって発見されるからである。このため、その教えに従おうとしても、従うことが出来ないのである、これに反して、ムハンマド(彼の上に神の恵みあれ)の教え、彼の説話、彼の生活方法、彼の道徳と習慣と美徳−−−要するに、彼の生涯と業跡のあらゆる詳細な記録は保存されている。それ故、ムハンマドはあらゆる予言者の中で、現きた人格を持ち、その歩かれた跡を正しく自信をもって従うことができる唯一の予言者である。

 3、 過去の予言者たちから呼ばれた導きは完全且総括的ではなかった。あらゆる予言者の次に後継者が受嗣いだが、後継者は先人の教えと指示に変更と書き変を加え、このようにして、改変と発展が続けられた。これが初期の予言者たち自身の説かれた純粋の教えが、ある一定の時が経過した後、忘却された理由である。遂に最も完全な導きの規範がムハンマド(彼の上に神の恵みがありますように)を通じて人類に告げられ、あらゆる以前の規範は自動的に廃棄された。何故ならば、売壁なる規範が出現したのに、不完全な規範に従うことは無益で愚かであるからである。ムハンマド(彼の上に神の恵みあれ)に従う人はあらゆる予言者たちに従う。何故ならば、彼等の教えの中で善で、永遠に有効なものはすぺて彼の教えの中に具現されているからである。それ故、ムハンマドの教えに従うことを拒否し、他の予言者に従うことを選ぷ者は、ムハンマドの教えの中に具現され、初期の予言者たちの経典に存在せず、最後の予言者を通じてのみ啓示された厖大な有益で貴重な教えと導きを失うことになるだけである。

 これがムハンマド(彼の上に神の恵みあれ)を信仰し、彼のみに従うことが、あらゆる人間の義務である理由である。真のムスリム(予言者の生き方に従う人間)になるためには、ムハンマド(彼の上に御栄あれ)を完全に信じ、以下の事柄を確信することが必要である。
 A ムハンマドは神の真の予言者である。
 B ムハンマドの教えは絶対的に完全で、少しも欠点や虚偽がない。
 C ムハンマドは最後の予言者である。彼の後には、最後の審判の日までいかなる地にもいかなる民族の間にも決して予言者は現れないし、また予言者に類する人間が将来現われると信じないことがムスリムに絶対必要なことである。そして、もし彼が最後の予言者であることを否定する者がいるならば、その人はカーフィルである。
 

 

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