ザカート=フィトル(断食明けのザカート)
ザカート=フィトル
 ザカート=フィトルとは、貧しい者と裕福な者をイードの日に親しく結び付け、間近に迫ったイードをすべてのムスリムが迎えられるように喜びを与え、また、斎戒の月の間の好ましくない言動・行動を浄化するためにおこなわれるものである。ハディース((アッラーの御使いは、ザカート=フィトルを義務づけた。無意味な言動・行動の罪から斎戒者を浄化し、貧者に給養する。礼拝(イードの礼拝)の前に支払った者は、ザカートとして受け入れられ、礼拝(イードの礼拝)の後に支払った者は、サダカとなる。))
法=義務(ワージブ)
 ザカート=フィトルは、すべてのムスリムに義務である。
 ハディース((アッラーの御使いは、ラマダーンのザカート=フィトルをすべての人に義務とした。老いも若きも、自由人であろうが、奴隷であろうが、男であろうが、女であろうが、ナツメヤシをサーア、または小麦をサーア。)) 注:サーアとは、升の単位で約2.2キロの小麦の量に当たる。
義務となる条件
1、イスラム
2、自由人
 ※ハンバリー派は奴隷も義務としている。
3、支払う能力があること。
 ※この解釈に関しては法学派により様々である。しかし、一般的には、その日の食べ物が確保できるものは義務とされる。

 一般的には、年齢・性別・貧富に関係なく、定められた量のザカート=フィトルを支払わなくてはならない。
支払う時期
★ザカート=フィトルが義務となる時間帯:
○ハナフィー派と一部のマーリキ派
・・・イードの日のファジュル(曙)から
○シャフィイー派・ハンバリー派・一部のマーリキ派
・・・ラマダーンが終ったマグリブ(夕方)から

★先に支払うことができるか?
○マーリキ派・ハンバリー派
・・・1日や2日早めることができる。イブヌ=ウマルが言った((サダカ=フィトルはイードの前1日か2日に渡していた。))
○シャーフィイー派
・・・イードの礼拝の前に支払うのがスンナである。礼拝より遅れることはマクローフであり、何の理由も無いのにイードの日より遅れることはハラームである。
○一般的なハナフィー派
・・・ラマダーンの間なら早めることは可能である。
支払う量について
 小麦と干し葡萄を除く、すべてのザカート=フィトルに支払う種類のものは、1サーアであることですべての法学者は合意している。
 小麦と干し葡萄に関しては、その支払う量が、法学派によって見解が違う。
○シャフィイー、マーリキ、ハンバリー各派・・・一律1サーアとしている。
○ハナフィー派・・・小麦と干し葡萄は半サーアとしている。
支払う種類について
○ハナフィー派:お金、または、法源で定められたもの
○マーリキ派:その地域の主食
○シャーフィイー派:マーリキ派にほぼ同じ見解
○ハンバリー派:小麦、ナツメヤシ、干し葡萄、大麦から支払う。もし、無い場合は、主食となるもので支払う。例えば、米、トウモロコシなど。
誰に支払うか?
○マーリキ派:貧者・困窮者に支払う
○シャフィイー派:下記の8種類の人たちの誰でも存在する者に支払うのが義務である。
○それ以外は:下記の8種類の人たちに支払うことができる。
ザカートを受け取れる8種類の人とは?
 コーラン第9章60((施し〔サダカ〕は,貧者,困窮者,これ(施しの事務)を管理する者,および心が(真理に)傾いてきた者のため,また身代金や負債の救済のため,またアッラーの道のため(に率先して努力する者),また旅人のためのものである。これはアッラーの決定である。アッラーは全知にして英現であられる。 ))
 上記のようにアッラーはコーランの中でザカートを受け取れるものを定めている。
1、貧者
2、困窮者
3、施しの事務を管理する者
4、心が真理に傾いてきた者
5、身代金(奴隷の開放のために)
6、負債者
7、ジハードする者(戦場に赴く者、学習に赴く者など)
8、旅行者
日本ではどのようにザカート=フィトルを支払うか?
 ここまでは、法学書の中から抜粋して訳しています。正確には、各法学派またはそれに準ずる法学者が、様々な見解を述べており、それぞれにもっと細かい解釈があります。ここでの訳は、わかりやすいように簡略化していますのでご了承ください。詳しく学びたい方は、法学書を読んでみてください。

 さて、各法学派により見解が分かれていますが、わが日本国では、主にハナフィー派を採用しています。または一部シャフィイー派を採用している人もいます。

 上記の法を、日本の状況を踏まえた上でまとめてみますと、ラマダーン月からイードの礼拝の開始までに、ザカートを受け取れる8種類の人に、お金でもって支払うのが妥当だと思われます。金額は、主食2.2キログラムをお金に換算した額となります。毎年、イスラム団体でその金額を定めていますが、全国一律決まった額にはなってないようです。多分見解の違いで額が違ってくるものと思われます。ただ一般的には、一人当たり約1500円を支払うのが妥当な金額だと思われます。
 例1:夫、妻、3歳の子供、妊娠5ヶ月になるお腹の中の胎児の家族であれば、4X1500=6000円。
 例2:寝たきりの祖母、夫、妻、都会で下宿してる大学生の家族・・・4X1500=6000円。

 なお、ザカートル=フィトルの支払い先・支払方法がわからないという声もよく耳にします。上述の8種類の人を探して手渡すのも1つの方法ですが、期間が限られている上、その条件を満たす人探し出すのは困難です。主食2.2キロを持ち運ぶのもたいへんなものです。日本のようにムスリムが点在している状況では、国内のイスラム団体やマスジド、ウェブサイトに振り込む方法が現実的かと思います。イスラム団体、マスジドは、マスジドリストで確認してください。
 
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使用した書籍:"al-mausu:at al-fiqhiyyah"と"Fiqh as-sunnah"