イスラームと社会的責任

T・B・イルビング


一、序文


現代の深刻な問題は、これまでの古い規範が若い世代の人々の心をとらえることがで きなくなり、今や神に対する無知の時代、すなわちアラビア人あるいは、イスラーム 教徒の言う、いわゆる新しい「ジャヒリーヤ(暗黒時代)」の時となりつつあるとい う現実にある。


それは近代世界に支配的であった、西欧的価値観が根本的に誤ったものであったのか 、あるいはある種の頽廃的要因が、マス・メディアの世界を触ばみ、悪影響を及ぼし たことによるものなのか判然とはしていないが、問題は西欧世界がすべての地域にわ たって、今や真の危機に直面しているという事実である。


その危機への過程は、西ヨーロッパと北アメリカにおける十八世紀の啓蒙運動(長い 間支配的であった偏見から人々を解放したと恩われた)とは、本質的に桐反する性質 をもっていた。


また、すでによく知られているように、預言者ムハンマド(彼の上に平安あれ)が、 かつてアラビア半島の混乱を社会政治的に指導し、アラビアをイスラームの統一国家 とした画期的な運動と、ヨーロッパ、北アメリカのその啓蒙運動とは大きな対照をな している。


西ヨーロッパ中世紀にあった、人類の歴史の中の「暗黒時代」は、イスラームにおい てはその初期の成長期に、あらゆる地域においてその存在価値を失い、ぬぐいさられ てしまったのである。








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