イスラーム入門シリーズ
聖預言者ムハンマド



十六、メッカへの再入城



 イスラーム暦七年に、フダイビーヤ協定がクライシュ族との間で締結されました。その頃すでにクライシュ族は、ムスリムの強大な力におそれを抱きはじめていました。



 ところで、この協定の条項にしたがって預言者(かれの上に平安あれ)とその教友たちはアッラーの聖なる神殿カアバへの巡礼を行うためメッカに向いました。



 しかし、翌年にはクライシュ族がこの協定に違反したためこのフダイビーヤ協定は、わずか一年で破壊されてしまったのです。



 しかし、多くの信者をひきつれた預言者はクライシュ族の永年の敵対行為を永久にやめさせるために、もしできれば血を流さずにこの目的を達しようと、メッカに向って進軍を開始したのです。



 これに抵抗することが今では不可能であると判断したクライシュ族は、ムハンマドの軍門にくだり、預言者はかつて自分が最初にアッラーの啓示を人々に伝えた思い出の街メッカに無血入城したのです。



 かれはカアバ神殿に入り、唯一の神アッラー、絶対無比の神アッラーの神殿を永年にわたって汚してきたすべての偶像を破棄してしまいました。



 預言者とその教友たちを長い間迫害しつづけた預言者の敵たちは、今や敗者として彼にあわれみを請い、彼からの懲罰が下るのを待っていました。預言者(かれの上に平安あれ)はこのたびムスリムに与えられた勝利をアッラーに感謝したのち、おそれおののくメッカの人々に「今わたしが、おまえたちに何をしようと考えていると思うかね」とたずねました。かれらは不安そうに「気高いお方と、気高いお方の子供であるムハンマド様、すべてはあなた様の意のままに……」と答えました。



 全世界の人々への慈愛と救いとをもたらした預言者ムハンマドは、「今日お前達には、なんのとがめだてもしない。みな自分の家庭に帰りなさい。お前達はみな自由なのだ。」告げられました。



 このようにして、預言者は降伏した敵の扱い方をすべてのムスリムに示されたのです。



 その後二年の間、すなわちイスラーム暦の十年までに、ユダヤ教徒やキリスト教徒を含めて数多くの人々がイスラームに入信しました。イスラームの教えを受け入れなかった人たちも平和に安全にそして充分な保護のもとに、安らかに生活を送りました。



 これはクルアーン第二章、第二五六節にも述べられているとおりです。



 『宗教には強制があってはならぬ。』と。







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