イスラーム入門シリーズ
聖預言者ムハンマド



七、ムハンマドの結婚



 商品運搬のための隊商の責任者としてムハンマドを雇っていた多くの商人の中に、ハディージャという名の女性がいました。



 ハディージャは、二度夫を失い息子二人と娘一人がありましたが、その当時は夫から相続した事業を経営してうまく成功していました。



 彼女は、ムハンマドにくらべてはるかに金持ちであった上に、年は四十に達しており、一方ムハンマドは。二十五才の若さでした。ムハンマドは貧しい上に無学だったので、ハディージャのような金持ちで名門の女性の夫として選ばれるなどとはとても考えられないことだったのですが、ハディージャは、ムハンマドと共に事業をやっている間に、彼が正直で親切ですべての面で責任感のあるまれにみるすぐれた人物であることを見抜いたのです。ハディージャは、ムハンマドの金銭ではあがない得ない偉大な素質を認めて、自ら身を低くしてムハンマドに結婚してくれるよう申し込みました。



 あらゆるものの将来についてすべてを知りたもうアッラーは、その時すでに将来ムハンマドの身にふりかかる多くの困難についても、またハディージャが最初にイスラームに入信し、これから先の苦しい時代にムハンマドを勇気づけ、その力になることもご存じだったのです。



 ムハンマドとハディージャは、それから二十五年間ハディージャがこの世を去るまで円満で幸福な結婚生活を送りました。



 二人の間にできた三人の男の子はすべて若くして死にましたが、四人の娘は皆長生きでした。ハディージャは、その生存中ずっとムハンマドの唯一の妻でした。



 彼女は、ムハンマドが五十才の時、すなわち彼がイスラームの布教を始めてから十年目にこの世を去ったのです。



 ハディージャは、自分の夫ムハンマドを彼の布教の最も苦しい時期に全力をあげて援助したのです。



 ムハンマドは、彼女の愛と献身を決して忘れることなく、自分の妻を「最も祝福されるべき婦人」と呼んで、彼女の死後も自分の生涯を通じてその愛情を心に留めていました。



 ハディージャの死後何年かたってからムハンマドは数人の女性と結婚しましたが、そのうちアーイシャ以外はすべて未亡人か離婚した女性でした。



 これは、ムハンマドがこれらの女性を必要としていたというより彼女らこそムハンマドを必要としていたというべきでしょう。なぜならこれらの結婚は、他の部族との親睦をかためるための政略結婚であり、また死亡した教友達の未亡人の生活を支えるためのものであったからです。



 しかし、結婚の理由がたとえ政略的なものであれまた慈善的なものであれ、ムハンマドはすべての妻に愛情、尊敬、公正、親切をもって接しました。



 こうしてムハンマドは、女を動物に毛のはえたものくらいにしか扱っていなかった当時の人々に、貧富、老若、学識、離婚等の有無にかかわらず、すべての女性達を愛し尊敬することを身をもって教えたのです。



 ムハンマドは、人々に対し「天国は、母の足下にある」と告げました。







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