イスラームの生き方

イスラミックセンター編著


二、道徳の意義
9. 結論


イスラームの道徳律は、他人との関係における義務と権利であると言えましょう。ここでは義務の面を強調してきましたが、他人への義務は当然相手の権利と見なすことができます。したがって「子供に対する親の義務」は「親に対する子供の権利」と言いかえることもできるわけです。



しかし、ここで強調しなくてはならないのは、イスラームで言う個人の権利と義務がアッラーとその預言者から与えられたもので、人間の作った道徳理念によるものではないことです。イスラームで説いている態度と行為には、他の道徳律と共通のものが多いのですが、その精神において異なっているのです。たとえば、商業活動において公正と正直を求めることは、べつだん変ったことではありません。ただ、それらがアッラーに対する義務であることを強調することによってイスラームは商業遺徳を精神的原理へと高めているのです。ムスリムが正直で公正であるとき、かれは健全な商取引での利益を得るばかりでなく、アッラーの命に従うという精神的恩恵を得るのです。逆に、相手をだますとき、かれは同胞を裏切るだけではなくアッラーにそむくことにもなるのです。



要するに、イスラームの道徳は、他人との関係において義務と権利を明示しており、その義務は同時にアッラーに対する義務でもあることを強調しているのです。その教えは、正直、親切、正義、慈善その他における根本的態度を示しており、その基本原理は二十世紀今日でも、七世紀のアラビアと全く同じように通用するものなのです。



そしてなんじらは


アッラーのご法が決して変らぬことを知るであろう……


(聖クルアーン第三五章三二節)



(M・A・K)





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