ハディース・イスラーム伝承集成
夢の解釈(二分の一)

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ブハーリー編纂
牧野信也訳





神の使徒の啓示の始まりは敬虔なヴィジョンであった。

(一)アーイシャによると、神の使徒に下された啓示の始まりは夢の中の本当のヴィジョンであり、それは必ず暁の陽の輝きのように彼に現われた。すなわち、彼は糧食を携えてヒラーの山に幾晩も籠って礼拝に没頭し、また妻ハディージャのもとに戻って次の参篭に備えるということを繰り返すうちに、遂にヒラーめ洞窟にいた彼のもとに真理が突然訪れた、それは天使の姿として理われて「誦め」と命じたが、預言者が「誦むことができません」と応えると、天使は彼を捉え、息がつまって死にそうになるほど締めつけた。その後で天使は彼を放し、また「諦め」と命じたとき、彼が「誦むことができません」と応えると、天使は彼を捉え、息がつまって死にそうになるまで締めつけた。それから天使は彼を放し、さらに「誦め」と命じたとき、彼が「誦むことができません」と応えると、天使は彼を三度目に捉え、息がつまって死にそうになるまで締めつけた。それから天使は彼を放し、「『創造立なる主の御名において。いとも小さい凝血から人間をば創りなし給う。汝の主はこよなく有難いお方。筆もつすべを教え給う。人間に未知なることを教え給う』と唱えよ」と命じた。これを聞いて預言者 は怖れに震えてハディージャのもとに引き返し、「わたしを覆ってくれ、わたしを覆ってくれ」と叫び、彼女が彼を覆ったとき、怖れは消え去った、そこで彼がハディージャに「わたしに何が起ったのだろう」と言って、これまでのことを話し、「わたしはもうだめなのではないが」と訴えたとき、彼女は「とんでもない。むしろ、喜びなさい。アッラーは決してあなたを辱めないでしょう。あなたは親族のために尽くし、真実を語り、弱い者をいたわり、客を厚くもてなし、不幸な人々を助けていますから」と応え、それから夫を彼女の従兄弟であるワラカ・ブン・ナウファル・ブン・アサド・ブン・アブド・ル・ウッザーのもとへ連れて行った。彼はキリスト教徒で、福音書の一部をアラビア語で書いていたが、すでに高齢な上、盲目であった。さて、ハディージャがワラカに「夫の言うことを聞いて下さい」と求めたとき、彼が「ムハンマドよ、お前は何を見たのか」と尋ねると、預言者は先頃見たヴィジョンのことを話した。これを聞いてワラカが「これはかってムーサに遣わされた天使だ。ああ、わたしがもっと若げればいいのだが。そうすれば一族の者達がお前を追出すとき、立会うことができるだろ うに」と言ったので、神の使徒が「人々はわたしを追出すのですか」と尋ねると、彼は「そうだ。誰でも、お前がもたらしたような啓示をもたらす者は必ず迫害される。もし、お前の時代まで長生きすることができるならば、わたしはお前を力の限り助けよう」と応えた。


しかし、ワラカは問もなく死に、また啓示はしばらくの間途絶えたので、預言者は非常に悲しみ、そのため彼は山の頂きから身を投げようとして何度も出かげたほどであった。げれども、身を投げようとして頂きに達する度ごとに、天使ジブリールが現われて「ムハンマドよ、お前は本当に神の使徒なのだ」とよびかげたので、心の動揺はおさまり、彼は家へ戻った、その後、また長い間啓示が途絶えたときも、彼は同様にしたが、山の頂きに達するやいなや、天使、か現われて前と同じ言葉で彼に喚びかけた。





敬虔な人々のヴィジョン。いと高き神の言葉「アッラーはかねて使徒にお見せになったまことの夢をそのまま実現して下さった。『いつの日か、アッラーの御心ならば、汝ら必ず聖なる神殿に入ることができようぞ、頭を剃り、髪を刈って、なんの心配もなく』と。すなわちお前たちの知らないことまでアッラーは知っておられた。そればかりか、その前に手近な勝ちいくさまで用意して下さった」(四八の二七)。

(一)アナス・ブン・マーリクによると、神の使徒は「敬虔な人の良いヴィジョンは預言の四十六分の一に当る」と言った、という。





神からのヴィジョン。

(一)アブー・カターダによると、預言者は「本当のヴィジョンは神から、しかし悪い夢は悪魔から来る」と言った。



(二)アブー・サイード・アル・フドリーによると、預言者は言った。「あなた方のうちの誰でも、好ましい夢を見たとき、それは神からきたのであるから、神を讃え、それを人々に話しなさい。しかし、もしいやな夢を見たならば、それは悪魔からであるから、神に助けを求め、これを誰にも語るな。そうすれば、この悪い夢から害を蒙ることはないであろう」と。





敬虔なヴィジョンは預言の四十六分の一に当る。

一)アブー・カターダによると、預言者は「敬虔なヴィジョンは神から来るが、邪悪な夢は悪魔から来る。もし悪い夢を見たときは、アッラーに助けを求め、自分の左側に唾を吐け。そうすれば、悪い夢から害を蒙らないであろう」と言った。



(二)ウバーダ・ブン・アッ・サーミトによると、預言者は「信仰者のヴィジョンは預言の四十六分の一に当る」と言った。



(三)アブー・フライラによると、神の使徒は「信仰者のヴィジョンは預言の四十六分の一に当る」と言った。



(四)アブー・サイード・アル・フドリーによると、神の使徒は「敬虔なヴィジョンは預言の四十六分の一に当る」と言った。





ムバッシラート(字義通りには、「よい知らせを伝える者」)。

(一)アブー・フライラによると、神の使徒が「預言のうちムバッシラート以外は残らなかった」と言ったとき、人々が「ムバッシラートとは何ですか」と尋ねると、彼は「敬虔なヴィジョンだ」と答えた。





ユースフの夢。いと高き神の言葉「ユースフがその父にこう言ったときのこと、『お父さん、僕、十一の星と太陽と月を夢に見ました。みんな僕の前に跪いて礼拝していましたよ』と。父ヤァクーブは言った、『これ、お前、その夢の話を兄さんたちにしてはならぬぞ。きっと何かお前に悪だくみをしかげるだろうから。いいか、シャイターンは人間の不倶戴天の敵なのだよ。そういうことであれば、きっと主がお前をお選びになって、お前に世の出来事の意味を教え、お前と、それからヤァクーブ一家の上に恩寵を全うなさるおつもりであろう。その昔、お前の御先祖イブラーヒームとイスハークの上に全うなされたように。本当に、主は全知にして賢くおわします』と」(一二の四−六)。「ユースフは言った。『お父上、昔、私の見た夢はこの通り正夢でございました。夢をそのまま現実として下さったのは、主でございます。シャイターンのたくらみで私と兄さんたちの間がまずくなってから、主は私を牢屋から出して下さったり、あなた方を沙漠からお連れ下さったり、何かと私によくして下さいました。まったく、主は御心のままに本当にやさし くして下さいます。まことに全知にして賢い御神です。主よ、汝はこうして私に王者の権能を授け、また昔から今に伝わるくさぐさの物語の深い意味を知るすべをお教え下さいました。おお、天と地の創造立よ、汝こそ、現世においても来世においても私の唯一の守護者におわします。願わくば、私を帰依者としてお傍に召し、義しき人々の列に加え給え』と」(一二の一〇一〔一〇〇〕−一〇二〔一〇一〕)



イブラーヒームの夢。「さて、イスハークが歩きまわる年頃になったとき、イブラーヒームが『わたしはお前を屠ろうとしている夢を見た。お前どう思うか』と言うと、彼は『父さん、どうか神様の御命令通りになさって下さい。アッラーの御心なら、僕きっとしっかりしてみせますよ』と答えた。さていよいよ二人がアッラーの仰せに順うことになって、イブラーヒームが子供を地上にうつぶせにさせた正にそのとき、我らは声をかけて、『やれ待てイブラーヒーム、かの夢に対する汝の誠はすでに見えた。これは善行にいそしむ人々に我らが褒美をとらず方便であるぞ』」(三七の一〇〇〔一〇二〕−一〇五)



(一)イブン・ウマルによると、或る人達は、「定めの夜」がラマダーン月の最後の七日間に起ったという夢を見、他の人達は、それが最後の十日間に起ったことを見たとき、預言者は「それを最後の七日間に求めよ」と言った。





囚人達の夢。いと高き神の言葉「彼と一緒に牢に入れられた二人の若者があった。その一人が言うことに、『僕は、自分がぶどうを搾っているところを夢に見た』と。もう一人は『僕の見た夢は、頭の上にバンをのせて行くところだった。鳥が何羽も来てそれを食べていた。教えて下さい、これは一体どういう意味なんですか。お見かけしたところ、君は大変立派な方らしいが』と言った」(一二の三六)。

(一)アブー・フライラによると、神の使徒は「もしわたしがユースフと同じように牢屋に留まったとして、王の使いによびかげられたならば、ただちにそれに従ったであろうに」と言った。




一〇
夢で預言者を見る者。

(一)アブー・フライラは、預言者が「夢でわたしを見る者は、覚めた状態でもわたしを見、そのとき悪魔はわたしの姿をして現われないであろう」と言うのを聞いた。



(二)アナスによると、預言者は「夢でわたしを見る者は本当にわたしを見たことになる、そこでは悪魔はわたしの姿をして現われないから。そして信仰者のヴィジョンは預言の四十六分の一である」と言った。



(三)アブー・カターダによると、預言者は言った。「敬虔なヴィジョンは神から来るが、邪悪な夢は悪魔から来る。いやな夢を見た者は左側に三回唾を吐き、悪魔に対して神に助けを求めよ。そうすれば、悪い夢から害を蒙らず、また悪魔はわたしの姿をして現われないであろう」と。



(四)アブー・カターダによると、預言者は「夢でわたしを見る者は真実を見たのである」と言った。



(五)アブー・サイード・アル・フドリーは、預言者が「夢でわたしを見る者は、真実を見たのである。そこでは悪魔はわたしの姿をして現われないから」と言うのを聞いた。




一一
夜の夢。これについて、サムラが一つの伝承を伝えている。

(一)アブー・フライラによると、預言者は「わたしは言葉の鍵を与えられ、人々の間に怖れを吹き込むことによって勝利を得た。ゆうべ、夢でわたしは、この地上の宝庫の鍵がもたらされてわたしの手に置かれるのを見た」と言った。また、アブー・フライラは「神の使徒はみまかったので、今やあなた方がそれを意のままにし得るのだ」と言った。



(二)アブド・アッラー・ブン・ウマルによると、神の使徒は語った。「ゆうべ、わたしは夢でカァバの傍に居り、一人の男を見た。彼は未だかって見たこともないほど美しい褐色の肌と、見事に垂れた巻き毛をもち、そこからは水が滴り落ちていた。そして彼は二人の男の肩によりかかりながら神殿のまわりを巡っていた。『これは誰か』とわたしが尋ねると、『マルヤムの子キリストだ』ということであった。次に、見ると、そこには縮れた髪の男が居り、その布目はつぶれ、種を抜いたぶどうのようであった。『これは誰か』と尋ねると、『偽キリストだ』という答であった」と。



(三)イブン・アッバースによると、或る男が神の使徒のもとに来て、「ゆうべ、私は夢を見ました」と言って、長々と話を続けた、という。




一二
真昼の夢。イブン・スィーリーンによると、真昼の夢は夜の夢のようだ、という。

(一)アナス・ブン・マーリクによると、神の使徒は、ウバーダ・ブン・アッ・サーミトの妻であったウソム・ハラーム・ビント・ミルハーンのもとを訪れるのが常であったが、或る日、彼が行くと、彼女は御馳走をした後で彼の髪を流いた。よい気持になって神の使徒は眠り、やがて目覚めてほほ笑んだので、ウンム・ハラームが「なぜほほ笑んでおられますか」と尋ねると、彼は「夢で、わたしの民のうちの幾人かが現われ、彼らは神の道に力を尽して戦い、玉座の上の王のように堂々と海の大波を横切って進んだからだ」と答えた。そこで彼女が「わたしもその一員にされますよう、アッラーにお祈り下さい」と願ったとき、彼は彼女のために神に祈った後、また横になって眠り、しばらくして目覚め、ほほ笑んだので「なぜほほ笑んでおられますか」と尋ねると、彼は「わたしの民のうちの幾人かが夢で現われ、彼らは神の道に奮戦した」と答えた。そこで再び彼女が「わたしもそのうちの一人にされますように、アッラーにお祈り下さい」と求めたとき、彼は「お前はもうそのうちの一人だ」と答えた。実際、彼女はムアーウィヤの時代に船で出かけたが、海から陸に上った後、路駝から落ちて死 んだ。




一三
女達の夢。

(一)ハーリジャ・ブン・ザイド・ブン・サービトによると、神の使徒に忠誠を誓ったアンサールの女ウソム・ル・アラーゥは語った。アンサールの人々がムハージルーンの人々を銭で分げたとき、ウスマーン・ブン・マズウーンが当ったので、わたし達は彼を家に泊めましたが、病が募り遂に亡くなりました。わたし達は彼の体を洗って衣に包み、神の使徒が入って来られたとき、わたしが死者に向って「ウスマーンよ、あなたに神のお恵みがありますように。アッラーがあなたを高貴な者として下さったことをわたしは証言します」とよびかげると、神の使徒はわたしに「アッラーが彼を高貴な者にして下さった、ということがどうしてお前にわかるか」と言いました。そこでわたしが「神の使徒よ、謹んで中し上げますが、ではアッラーは誰を高貴な者になさるのでしょうか」と尋ねたところ、彼は「ウスマーンはすでに死んだので、わたしは彼のためによかれと願うが、しかし神の使徒であるわたしでさえ、どうなるかわからないのだ」と答えました。この時以来、わたしは人をむやみに褒めそやすようなことを決してしないようになりました、と。



(二)アッ・ズフリーによると、神の使徒が「わたしでさえ、どうなるかわからない」と言ったとき、ウンム・ル・アラーゥは悲しみ、それから眠り、ウスマーンに流れる泉が与えられる夢を見た。これを彼女が話したとき、神の使徒は「それはウスマーンの善い行いの報いだ」と応えた。




一四
悪い夢は悪魔から。悪い夢を見たときは、自分の左側に唾を吐き、アッラーに助けを求めよ。

(一)預言者の教友であり、またその騎士の一人でもあったアブー・カターダは、神の使徒が「良い夢はアッラーから、そして悪い夢はシャイターンから来る。あなた方のうちの誰でも、嫌な夢を見たときは自分の左側に唾を吐き、悪魔に対してアッラーの助けを求めなさい。そうすれば、その夢によって害を蒙ることはないであろう」と言うのを聞いた。




一五
夢で見た乳。

(一)イブン・ウマルによると、神の使徒が「夢でわたしに乳の入った器がもたらされ、それを飲んだところ、わたしの爪から乳が流れ出るのを見た。そこでわたしは残りをウマルに与えた」と言ったとき、信徒達が「神の使徒よ、この夢をどのように解かれますか」と尋ねると、彼は「ここで乳とは知識のことだ」と答えた。




一六
乳が爪から流れ出ること。

(一)イブン・ウマルによると、神の使徒が「夢でわたしに乳の入った器がもたらされ、それを飲んだところ、わたしの爪から乳が流れ出るのを見た。そこでわたしは残りをウマルに与えた」と言ったとき、周りに居た人達が「神の使徒よ、これをどのように解かれますか」と尋ねると、彼は「ここで乳とは知識のことだ」と答えた。




一七
夢で見たカミース。

(一)アブー・サイード・アル・フドリーによると、神の使徒が「夢でわたしにカ、・・ースを着た人々が現われ、その或るものは胸までの長さであり、他のものはそれに達しなかった。そこへウマル・ブン・アル・ハッターブが通りかかり、彼は引きずるほど長いカミースを着ていた」と話したとき、信徒達が「神の使徒よ、この夢をどのように解かれますか」と尋ねると、彼は「ここでカミースは信仰のことだ」と答えた。




一八
夢で見た引きずるカミース。

(一)アブー・サイード・アル・フドリーによると、神の使徒が「夢でわたしにカミースを着た人々が現われ、その或るものは胸までの長さであり、他のものはそれに達しなかった。それからウマル・ブン・アル・ハッターブが現われたが、彼は引きずるほど長いカミースを着ていた」と話したとき、信徒達が「神の使徒よ、この夢をどのように解かれますか」と尋ねると、彼は「ここでカミースは信仰のことだ」と答えた。




一九
夢で見た緑の園。

(一)カイス・ブン・ウバードは語った。わたしがサァド・ブン・マーリクやイブン・ウマル等と一緒に居たとき、アブド・アッラー・ブン・サラームが通りかかると、彼らは「これは天国に入る人だ」と言った。そこでわたしがこのことをアブド・アッラーに話したところ、彼は次のように応えた。「とんでもない。彼らはよく知りもしないことを言うべきではない。わたしは夢で緑の園の中に柱が立てられ、そのてっぺんには把手があり、足下には奴隷が居るのを見たが、この柱に登れ、と言われたので、わたしは登って行き、遂にその把手をつかんだ」と。後にわたし(カイス・ブン・ウバード)がこれを神の使徒に告げたとき、「アブド・アッラーはしっかりした把手をつかんで死ぬだろう」と彼は言った、と。




二〇
夢で女の覆いを取ること。

(一)アーイシャによると、神の使徒は語った。「夢でわたしはお前を見た。或る男がお前を絹の布に包んで抱きかかえ、『これはお前の妻だ』と言ったので、覆いを取ってみると、お前であった。そこでわたしは『これが神からであるならば、成就されるであろう』と言った」と。




二一
夢で見た絹の衣。

(一)アーイシャによると、神の使徒は言った。「お前を要る前、わたしは夢でお前を二度見た。すなわち、天使がお前を絹の布に包んでかかえていたので『覆いを取って下さい』と言うと、天使はそのようにし、見ると、お前であった。そこでわたしは『これが神からであるならば、成就されるであろう』と言った。その後、わたしはまた同じ夢を見た」と。




二二
手に渡された鍵。

(一)アブー・フライラは、神の使徒が「わたしは主要な言葉を持って遣わされ、怖れを敵に吹き込むことによって勝利を得た。またわたしは夢で、地上の宝庫の鍵がもたらされてわたしの手に置かれるのを見た」と言うのを聞いた。ブハーリーによると、「主要な言葉」とは、預言者ムハンマド以前に啓示された聖典に書かれている多くの事柄を一つ或いは二つの事へ集約したものである、という。




二三
把手につかまること。

(一)アブド・アッラー・ブン・サラームは語った。夢でわたしは或る園の中に居り、その園の真中には柱が青・先端には把手がついていた。そこで「往に登れ」と言われたが、「できません」と応えると、奴隷が来てわたしの衣を脱がせてくれたので、わたしはよじ登って行って把手につかまり、それを握ったまま目が覚めた。後に、わたしがこの夢のことを預言者に話したとき、彼は「その園はイスラームの園であり、その柱はイスラームの柱であり、またその把手は最も頑丈な把手である。死ぬまでお前はイスラームにしっかりつかまっておりなさい」と応えた、と。




二四
(日本語の原文にない)



二五
絹の布と天国に入ること。

(一)イブン・ウマルは語った。夢でわたしは自分が絹の布を手に持っているのを見て、それを天国のどこかへ放り投げると、それは必ずわたしをその場所へ連れて行くのであった。このことをわたしがハフサに話し、ハフサがそれを預言者に伝えたとき、彼は「お前の兄弟−−或る伝承によると、アブド・アッラーは敬虔な男だ」と言った、と。




二六
夢で見た鎖。

(一)アブー・フライラによると、神の使徒は一時が近づくとき、信仰者の夢は嘘でないであろう。なぜならば・信仰者の夢は預言の四十六分の一であり、預言に属するものは嘘でないからである」と言った。また、アブー・フライラによると、夢には、それぞれの人の想い出、悪魔の嚇し、そして神からの喜びの知らせ、の三つがあるが、嫌な夢を見た人は、それを誰にも告げず、立って行って礼拝すべきである。そして夢に現われる首枷は嫌われるが、鎖は信仰の堅固さを表わすため、喜ばれる、という。




二七
夢で見た湧き出る泉。

(一)神の使徒に忠誠を誓った女の一人ウソム・ル・アラーゥは語った。ムハージルーンの住まいのことでアンサールの人、が籤を引いたとき、ウスマーン・ブン・マズウーンが当ったので、わたし達は彼を泊らせましたが病に罹り、看病の甲斐もなく遂に亡くなりました。そこでわたし達は彼の体を衣に包み、神の使徒が入って来られたとき、わたしが死者に向って「ウスマーンよ、あなたに神のお恵みがありますように。アッラーがあなたを高貴な者として下さったことをわたしは証言します」とよびかけると、神の使徒はわたしに「どうしてそれがお前にわかるか」と言いました。それてわたしが「わかりません」と応えたところ、彼は「ウスマーンはすでに死んだので、わたしは彼のためによかれ、と願うが、しかし神の使徒であるわたしも、またお前たちも、どうなるかわからないのだ」と言いました。この時以来、わたしは人をむやみに褒めそやすようなことは決してしないようになりました。また、わたしは夢でウスマーンが湧き出る泉の傍に居るのを見て、これを神の使徒に話したとき、「それは彼の善い行いの報いだ」と彼は応えました。




二八
人々に飲ませるために井戸の水を汲むこと。

(一)イブン・ウマルによると、神の使徒は言った。「水を汲むために、わたしが井戸の傍に居たとき、アブー・バクルとウマルがやって来て、先ずアブー・バクルが桶を取って一杯か二杯汲んだが苦労した。神が彼を赦し給うように次に、アブー・バクルの手からウマルが桶を取ると、それは大きな桶となったが、わたしはこれほど熱心に仕事をするすばらしい人を見たことがない。それで人々は遂に渇きを癒し、休むことができた」と。




二九
苦労して、井戸から一桶或いは二相の水を汲むこと。

(一)サーリムが預言者の夢として伝えるところによれば、人々が井戸の周りに集ったとき、アブー・バクルが立って一桶か二桶の水を汲んだが、苦労した。アッラーは彼を赦されるであろう。次にウマルが立つと桶は大きくなったがわたしはこれほど熱心に仕事をするすばらしい人を見たことがない。それで人々は遂に渇きを癒し、休むことができた。



(二)アブー・フライラによると、神の使徒は言った。「夢でわたしは或る井戸のところに居り、桶で水を何回か汲んだ。次にイブン・アビー・クハーファがそれを取って一桶か二桶汲んだが苦労した。アッラーは彼を赦されるであろう。それから桶は大きくなったが、ウマルはそれを取って汲んだ。わたしはウマルほど熱心に汲む人を見たことがない。それで人々は遂に渇きを癒し、休むことができた」と。




三〇
夢における休息。

(一)アブー・フライラによると、神の使徒は言った。「夢でわたしが或る水場に居て人々に水を飲ませていたとき、アブー・バクルが来て、わたしを休ませるために、わたしの手から桶を取り、二回ほど汲んだが苦労した。アッラーは彼を赦されるであろう。次にウマルがやって来て彼から桶を取って汲み続け、遂に人々は皆飲んで立ち去ったが、泉はなおもこんこんと湧き出していた」と。










書名
著者
出版社
出版年
定価
ハディース・イスラーム伝承集成
下巻: ISBN 4124031378
ブハーリー編纂
牧野信也訳
東京・中央公論社 1991 本体9515




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