宗教法人イスラミックセンター・ジャパン編

聖クルアーンとハディース
(コーランとハディース)

一、序言
 四十才に達した頃、ムハムマド(彼の上に平安あれ)はその正直さと親切心により、出生地メッカの住民に信頼され広く愛されていた。愛する妻子に囲まれた楽しく恵まれた生活ではあった。そこにはしかし、心の焦だちが一抹の影を落していた。人生と宇宙の神秘について悩み、多神教徒の下劣な慣習と偶像崇拝、同族の一般的木道徳と堕落などにうんざりしていたのだ。そこで彼はメッカに近いヒーラの洞穴にこもるようになった。ある夜のこと、一人の天使が出現し「読め」と命じた。おそれおののいた彼は「読むことができません」と答えるが、天使はまだ「読め」と云う。同じ答えを返すと天使は彼を強く抱き、そして云った。

 読め、創造したまえる方なんじの主のみ名によって。一凝血(ぎょうけつ)から、人間をつくりたもうた。読め、なんじの主は、こよなく尊貴であられ、筆によって教えたもう方。何も知らなかった人間に、教えたまえる方であられる。(聖コラーン九六章一1五節)

 この言葉を最初として、西暦六一○年に預言者ムハムマド(かれに平安あれ)に対する聖クルアーンの啓示が始まったのである。神の啓示は、彼が預言者として生き、西暦六三二年に世を去るまでの二十三年間にわたって続き、次の節で終っている。

 われは今日ここに、なんじらに対するわが恵みを全うし、なんじらのための教えとして、イスラームを選んだのである。(聖コラーン五章三節)

 この最初から最後までの神の啓示は、一冊の本となり、世界の歴史に基本的かつ重大な影響を与えてきたのである。他のいかなる本も、これほど多くの人々にこれほど永い年月にわたって、人間の基本的な疑念すなわち「人生の目的とは何か」「人生の目的を達成するために人はどのように生きればよいか」などの質問に対して、これほど明解な回答を与えてはいない。クルアーンは神の恵みの究極の表明であり、基本的な導きと根本的な知恵を美しく表わす神の言葉である。


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